SEFURE NO OWARI - Day 1

「ねえ、私の名前を言える?」













彼女と出会ったのは某駅のホームだった。



帰り道の電車が遅延していて携帯の電池もきれそう。


何か面白いことでもないかなあと思って後ろを振り返ったその先に彼女がいた。




携帯をいじる彼女。



画面には写真フォルダ


過去の写真を振り返り見ているようだ。














「あの頃に戻りたくても、なかなか戻れないものよね笑」



「え?」



彼女が顔を上げた。











「いやこんな電車待つんだったらさっき焦って最後の一杯一気するんじゃなかったなって」




「w」








「だからお姉さんにも一言。写真見て色々振り返ってもあの時の一杯はもう戻ってこないで」








「いや知らないからw」










「あの時の一杯をずっと後悔しながら、人はもっともっと強くなれるんやで!」








「意味わからんしw」








「まあまあとりあえず電車来ないし一杯飲みいこ!」










「そういうのはいいですw」








「いやお姉さんがモヒート好きなのはすごいわかってる。だけど、今日だけは俺はジントニックを飲みたい!さっきゆっくり飲めなかったジントニックを飲みたい。」








「いやジントニック嫌いだからw」









「そうかそれは残念だ。俺はどうしてもジントニックがのみたい。だがお姉さんがそこまでいうなら仕方がない。今日だけは信念を曲げてハイボールを飲みに行こう!」






「大げさw」







ジントニックハイボールどっちが好きなんやいうてみ!」




















「え?さっき嫌いいうたやん」








「そういったら諦めるかと思ったけど諦めないからもういいかなってw」








「また人を信じられなくなったわwほんとお姉さんひどいwそんでまたやっぱハイボール飲みたいとか言うんやろ。そういうのはお店入る前いうてな」





「言わないよw」







「わかったもう一回だけ信じるわ。ほんと普段こうやって知らない人に声かけられても絶対ついていかないのにw」






「それ私のセリフw」










そんな感じでバーに入店し、笑に溢れたトークを展開し、時間はあっという間に過ぎ去った。

1時間後








「終電なくなるで」








「あっ本当だ!もう帰らなきゃw」








「間に合う?思いっきり走らな!それほんま最終なん?」









「あと1本遅いのがあるけど乗り換えが面倒くさくてwはらぺこ君は終電大丈夫?」








「終電?そんなんとっくに過ぎ去ったわw話しが楽しすぎてどうでもよくなっちゃったよ」





「w帰れないやん」










「うん1人では帰れない....」









「.....。」









「よし決めた!わがままいう!もう少しだけ飲もう!」











そして

卒アルルーティーンで家に搬送。




事後決め手を聞いてみると、いろいろと答えてくれたが、
その中でも







「あなたの笑顔のその先が見てみたかったの笑」






この言葉がとても印象的だった。








そして気もあって何度かご飯を食べ、セッ久をする関係が続いた。








「笑った時の笑顔が好き」







「その笑顔で何人の女の子を笑わせてきたの?」






「俺は本当にいいなと思った女の子にしかこういうことできない。だからうーん100人くらいかな!(本当です)」






「最低笑」













彼女はいつしか呼べば来てくれるそういう存在になっていった。





「職場飲みもうすぐ終わるから会いたい。」





「ごめん仕事が長引いててちょっと無理そうだ」






他の女の子と飲みながら平気でこんなラインを送っていた。





「今日時間ある?少しだけ飲もうよ」








当日に平気でこんなラインを送っていた。
飲んだあと彼女が家に来てくれることはわかっていた。
















彼女として色々悩むことはあっただろう。



だが彼女は毎回飲んだあと家に来てくれて
そしてセッ久につきあってくれた。



















そんな彼女と先日お別れをした。



僕に彼女ができたためだ。









「今日飲みいける?」










ちょうど都合の良い時に向こうからラインがきた。










「いける!久しぶりに飲もう!」














会って数十分で僕は本題を切り出した。






彼女は静かに僕の話をきき、淡々と








「いつかこういう日が来るって分かってた。」










「他に女の子が家来てるんだろうなってのも知ってた。」










「それでもいつか振り向いてくれないかなって頑張ってた。」






























「ねえ私じゃだめなの?」
































僕は彼女を抱いたとある晩を思い出していた。















特筆もないいつものセッ久。















事後彼女が突如発した言葉






「ねえ、私の名前言える?」
























頭が真っ白になった。






言えなかった。









おれは数回セッ久をした女の子の名前を知らなかった。










知ろうともしなかった。










ラインを見れば名前が書いてある。
いざ困ったらラインを見ればいい。













それだけで今まで接してきた。










「やっぱり答えられないんだ.....。」













「ごめん.....。」












これしか言葉が出てこなかった。














こんなこともあっていっぱい傷つけてきた。










それでも彼女は俺を振り向かせようと傷つきながらも会いにきてくれた。












それなのにおれはこんないい子をさらに傷つけようとしている。





















「私からはもう連絡しないけど、また会いたくなったら連絡が欲しいな。」














「うん。」














「あと部屋はもっと綺麗にしないと女の子が家に来なくなるよ!」












「うん。ありがとう。」















「じゃあね。」













「うん、じゃあね。」













突如となく襲われる言いようのない不安感。













自分のやっていることが正しいのかわからなくなった。











正しいかどうかを考えるのが嫌になった。





















そして僕は彼女のラインを消した。








ラインを消して繋がりは消えた。








でも記憶は消えない。







しばらく、少なくとも結婚するまではこの言葉を引きずるのだろう。














「ねえ、私の名前言える?」




Fin